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研究者は何に悩み、どのように問題を解決するのか。 分野を超えた、研究者へのインタビュー第1弾。

2023年12月19日2023年12月27日卒業生・教員 理・工・農 学習方法Tips 研究 New Blows 記事

<撮影:髙瀬>

植田 美那子(うえだ みなこ)先生

東北大学大学院生命科学研究科 生態発生適応科学専攻 教授

研究キーワード:細胞内動態、体軸形成、植物胚発生

——————————————————————-

記事作成:2023年12月

取材:辻勇吹樹(理B3)、髙瀬大河(理B3)[New Blows]

研究内容

植物のからだは、どうして上に茎を伸ばし下に根を張るのか。遡ると植物は「受精卵」という細胞一個で、それが2個に分裂したときに植物の「上」と「下」が方向づけられる。それではこの特別な方向を持たないように見える1個の受精卵から、どのような内部の構造変化を経て分裂を行なうのか。植田先生は細胞の中をのぞく「ライブイメージング」の技術を使ってあらゆる実験をしながらこの問題に取り組んでいる。

目次

●   過去の悩みとその解決方法

●   いま悩んでいること

●   学生のうちにやっておくべきこと

 

●   即席”新”学問:「惑星デザイン学」 ー天文学コース3年 辻勇吹樹

Q1. 過去の悩みとその解決方法

——————————————————————————–

“玄人の知恵を借りることが私の悩み解決方法です”

  研究を始めた時には植物の「根」を扱っていましたが、細胞が多すぎてしくみがよく分からない、という点に1番フラストレーションがありました。 大根のように切っても切っても金太郎飴のように同じ形をしてるのは実はすごいことで、 細胞の向きが揃ってるから幅を変えないんです。細胞がランダムに分裂してしまうと「かぶ」みたいに、丸くなってしまいます。根っこは、結構シンプルな形作りの組織ですよって言われていましたが、それでも1本の根っこあたり、細胞は1000個ぐらいあります。その1000個が2000個になる過程は難しいと思ったので、 もっとシンプルだった細胞1個が2個になる受精卵の過程についてドイツで研究を行いました。

ドイツに行かれたのはいつごろのことなんでしょうか

博士過程まではなんとか「根」でやったんですけど、結局わからなくて。でも、その知識とか技術とかを生かして、もっとシンプルな組織に絞ろうと考えました。ただ種の中で受精卵からどうやって組織ができるかを研究している研究室が日本には当時あまりなく、たまたまドイツにあったので、研究員としてドイツに行きました。

今までの根の研究の知見を活かして研究を進めることはできたのでしょうか?

細胞1個が2個になる過程に注目したことで、本当に知りたかった「植物の上下はどうやって決まるか」という疑問の答えが、より深く見えるようになりました。

よく植物はレンガを積むみたいな感じだと言われています。1段にレンガが5個あるとして、もう1段積めば、10個になりますよね。そうすると2層になるじゃないですか。そのように細胞の組織は増えるわけです。この限りではレンガ(細胞)が最小単位ですよね。 でも受精卵という1個の細胞の中を見ると、その中に核とか、エネルギー合成を担ってるミトコンドリアとかがいたりするわけです。受精卵の中で液胞(※1)は細胞の下にあって核は上側にあり、それが分裂して、あまり液胞のない上の細胞と、液胞が満ちた下の細胞とに分かれます。細胞の中は、分裂する前からどう動くかそもそも決まってないといけないということがドイツで分かりました。

(※1)細胞の中にある水の袋。レタスを食べるときにみずみずしい食感を感じるのは、口の中で細胞の中の液胞が弾けて、水が出てきているため。

次の悩みポイントは、何がどうなって、 液胞が下に、核が上に行ったかという生の姿が見られないことです。例えるなら、ご飯を食べたらお腹膨れましたってなってるけど、「この人お腹膨れたんだな」しか見られないから、 いまご飯を食べている姿を見たいという感じです。そこで細胞の中をリアルタイムに見られる「ライブイメージング」(図1)という技術の方法論を獲得するべく、日本に帰ってきて、名古屋大学に行きました。あまり自力で悩みを解決してないですね。玄人の力を借りていました。

図1 「ライブイメ ージング」の方法。今まで細胞の中をリアルタイムで見る方法がなかったが、この技術によって核や液胞の動く様子が見えるようになった。

結局、もちはもち屋で、 自分が新しい料理を作りたいってなったとしても、もちはこの人から、野菜はこの人から買おうみたいな感じですね。まず受精卵が得意なドイツの人のところで、その受精卵が、1から2になるのはどういうステップなのかっていうのを身につけて、 次に、受精卵のではないですが、植物の細胞の中をイメージングする方法を知っている人のところに受精卵を持っていて、 やり方を教えてもらいます。そうしたら、自分の見たいものが見れるわけです。

当然、誰もやったことがないことを行うには、自分で開発するしかありません。聞いても全部教えてもらえるわけではなくて、受精卵についてはうまいこと改良しないといけない。だから自分でやらないといけない局面は絶対出てくるんですけど、そこまでは玄人の知恵を借りればっていうのが私の悩み解決方法です。

Q2. いま悩んでいること

——————————————————————————–

“コミュニケーション力が大事です”

  • 核や液胞が「上」「下」をどのように認識しているのか(図2)

受精卵は受精すると、一気に縮んで、 核の周りでチューブ状になります。どう考えても、ただの水の袋の振る舞いじゃないんです。これで上と下が決まっていくのですが、どうして上下を認識してチューブ状になるなどの動きをするのか、という悩みがあります。

図2 分裂するときの細胞の中の核と液胞の動き。細胞1個の時の核と液胞の動きが、最終的に葉や茎などのからだと根の形成にまで関わっている。

  • 受精卵はどうやって自分が受精卵だと認識しているのか

お父ちゃんかお母ちゃんの物質どちらか一方だけがいると、それはオスかメスですよね。 その2つが混ざった、お父ちゃんとお母ちゃんの物質が混ざってる状態は受精卵だけなんです。混ざったことで自分が受精卵だと認識します。でも混ざった時に、この大事なお父ちゃんかお母ちゃんの物質がいないと、細胞の中身がどっちに行ったらいいか分からないみたいな感じになって、上下対称のままになります。だから、そもそも受精とはなにか、つまり、受精したときに、細胞の中にどんな物質が揃うと何が始まるのか分からない、というのが今の悩みです。

1つの謎が解決するといろんな謎が生まれるから、研究テーマは尽きないんですね。

1個の受精卵を考えただけでも、

  • まっすぐ伸びられるのはなぜか。
  • 他の植物だとどうか。
  • どうしてほぼ一定の時間で分裂するのか。

など色々あります。 それぞれ1個を解き明かすと、論文1本書けてしまうので、若い時はすごい目移りします。研究室のトップになって良かったなって思うのは、これ、なんで。って思ったら、学生さん達に「君これやってみない?」と聞いてみることができるので、研究の幅が非常に広がります。

また、受精卵の伸びをコンピューターシミュレーションなども使って物理的に解き明かそうということもやっています。 受精卵にかかる力の逆算をして、どんな力がかかったときに何が起こるかを力学的に解き明かそうというものです。なので今、物理をやってます。

他分野の研究を自分の研究で使う時に、その他の分野の勉強はどのようにされるのでしょうか?

京都大学出身なので、学部の時に物理も勉強していましたが、今はもう覚えてないです。他にもドイツ語とか習っていたんですけど、ドイツに行った時にはすっかり忘れていました。なので必要に応じてやるしかないです。

だから、コミュニケーション力が大事です。自分は生物学科だって言っても、今のうちから物理の人とかと話をすると、自分の頭の中にあるものをちゃんと分かるように言語化して、異分野交流ができるようになっていきます。 ご年配の方々と話すことも異分野交流じゃないですか。だから相手がなにを伝えようとされていて、 この人に分かってもらうにはどういう言い方じゃないと伝わらないかなっていうのを、考えながら勉強すると良いと思います。例えば細胞が引っ張られる力と個人的には言いたいんだけど、多分物理の人には「張力」って言った方がスムーズですよね。だから、今のうちからいっぱい勉強しておくと、 活きてくると思います。

あと、そもそも自分は何が好きな人かってわかんないじゃないですか。 フタを開けてみたら、私は物理が好きな人だったらしいんですよ。たとえば山の中で、この植物はどんな環境に育っていて、葉っぱの形がとげとげだからこの科の植物だと分かる、といった分類が得意な方々もいます。他にも細胞をすり潰して分析して、これはこんな働きをするペプチドだといった生理学が得意な方々もいて、 結局自分は何が好きで得意かって、やってみないとわからないと思います。

だから、 いろんな授業を聞く時に、この話の中だと自分は何が好きか考えていくと、自分探しが多分できます。さらに色々と人の話を聞いてると、みんなの好きなポイントは多分違いますよね。そしたら新しい着眼点も得られて、自分の好きなところと友人の好きなところを組み合わせたらこういうことが分かるんじゃないかみたいな気づきがあると、異分野融合ができるようになると思います。生物でも物理でも宇宙でもなんでも複雑なので、どこが好きな人でもどこかで受け入れてくれる余地はありますね。

Q3. 学生のうちにやっておくべきこと

——————————————————————————–

“自分は何が得意になれる人かっていうのを知っておく”

人によるとしか言えないですけど、興味はすべての原動力で、身についた知識や技術は裏切らないので何をやってもいいと思います。それは別に広く浅くだろうが、ピンポイントで狭く深くだろうが、なんでもいいから一生懸命やることです。何もせず「俺の大学4年間なんだったんだ」ってなるよりは、とりあえずなんでもいいから興味を持ってやってみたら、それは裏切らないと思います。

また将来研究者になりたいなら

  • コミュニケーション力をつける
  • 友だちを見つける
  • 国語力をつける

ことです。実は国語力が研究者にとって非常に大事です。自分の脳内にあることを言語化して、聞いてくれる方々の心に響くにはどう伝えればいいのか考えなくてはならないからです。受精卵の中で何が起こってるかが分かれば私はハッピーですが、必ずしも他の人たちがそう思ってくれるわけじゃないので。

コミュニケーション力や友だちを見つけることは他の研究者と共同研究するときや、研究資金を申請するときにも重要です。自分にない技術を持っている人を見つけて一緒に研究するためには口説き落とさないといけないわけです。受精卵の中で起こっていることが解き明かせればできることや、方法論として色々なプラットホームにもなるんじゃないかみたいなことをちゃんと伝えたり、AIや顕微鏡など他の分野の人と組んだらこんなことができる、とか相談したりするわけです。それで認めてもらえたら、必要な実験装置が使えたり共同研究できたりするわけです。

他の研究者とのコミュニケーションと研究資金を申請するのは、伝えるっていう意味では共通してる能力ってことですね。

自分にもメリットがありますよね。たとえば自分は植物の多様性に詳しくなくても、「数千種の植物の姿を知ってるよ」という方から 「変な受精卵を作る植物がいるよ」とか教えてもらえたらすごいハッピーですよね。 受精卵って多くの植物で上下に分裂するんですけど、左右に分裂する植物もいるんですよ。そういうのを聞いたら、次はそれをモデル化して、シミュレーションで比較をしてみるみたいなことをすればいい。だから、そういう方たちと一緒に研究できたら、非常にwinwinじゃないですか。

だから専攻の違う友だちに、その専攻での勉強の面白さを聞いてwinwinにコミュニケーションをとる方法を今の内から身につけると、絶対どこに行っても活きてきます。

だから、コミュニケーション。私は自分では特殊な技術をもっていないので、一つの道を究めた凄い方々とネットワークを作って、一緒に面白い研究ができるといいなと思ってます。こんなふうに自分は何屋さんか、何が得意になれる人かっていうのを知っておくのは大事ですね。

取材させていただいた植田先生、この場で改めて感謝申し上げます。朝早くからの取材と丁寧な対応、実験室の案内、記事のチェックまで本当にありがとうございました。

即席”新”学問

ここではインタビュアーが自分の勉強している学問と結び付けて、インタビューの内容から新たな切り口を模索します。

 

 

「惑星デザイン学」 天文学×細胞内動態

理学部天文学コースM3 辻 勇吹樹

 地球が丸いことは地球人の私たちにとって最適なのであろうか。「惑星デザイン学」はインタビューを経て思いついた、惑星の形やシステムを再構成する学問である。

私たち生物は最初受精卵として丸い形であった。しかし、細胞が分裂してからだに上下が作られると動物は手足を生やし、植物は根や茎を伸ばしてそれぞれの環境に適応したからだになっていく。植田先生によれば、植物の細胞は上からの重力や光を感じて上下、成長する方向を決めて茎を伸ばして葉を生やすことができるそうだ。ただ種の中は光が無いので、とりあえず空間を仮定し、その後与えられた情報をもとに上下の方向を調整すると考えられている。このように植物は自律的にからだや仕組みを動かしてどうにか生きようとしている。

受精卵の形と同じように、地球や月などの星は丸い形をしている。星はほぼ球形を保ったままで、外部からの熱や光や重力をただ受けている。そこに自律的な作用はなく、まさに「物理」なのである。太陽などの輝く恒星は非常に長い年月を経た後に外層を失って小さな重い星となったり、大きな爆発を起こしてブラックホールとなる。これを「星の一生」として言われることもあるが、あくまで比喩であり、自律的ではなく全て物理的なプロセスを経て成長する。

地球が丸いことは、私たちにとって不便なこともある。太陽光や風力などの再生可能エネルギーは昼の時間や緯度などによって常に同じエネルギーが得られるわけではない。地球の1システムとして繋がっているので、あらゆる問題は国や大陸を超えて降りかかってしまう。これを地球のスケールで形を調節すると変えられることもある。例えば、エネルギーをひたすら生み出す生産エリアを土星の環のように地球から切り離されたところに置いてみるという方法。他にも太陽からの光をわずかに遮るフィルターで地球を包み温暖化を物理的に防ぐという策もある。今挙げたものがあらゆる問題を持っていることは言うまでもないが、来たる将来のエネルギー不足や厳しくなる気候変動の対策として、生物のように形を変化させることで生き抜いていこうという思いである。

惑星そのものの形を変えていくことは非現実的かもしれない。惑星に自律的な作用はなく、地球人が自分たちに都合のいいように星そのものにまで手を付けることは禁忌でさえあるかもしれない。人間のせいで気候変動を引き起こしてしまっていることは事実だが、人間が何らかの措置を講じなければならないのも事実である。とにかく何とかして私たちはこの先も生きていたい。それは人間という生物がはるか前の細胞1個であったときから定められた感情なのだ。

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