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先輩の声

キャパオーバーを楽しもう!〜留学・語学・研究の両立〜

写真:ドイツ留学中@ハイデルベルクにて in 2019

奥山 智天 (OKUYAMA Tomotaka)

東北大学大学院文学研究科修士課程1年

山形県出身。東北大学文学研究科心理学研究室所属。

大学では、国際交流サークル@home、バドミントンサークルSQUAREに所属。

オーストラリアへの短期留学、ドイツへの長期留学を経験。

語学への強い関心から、学部生時代に、英語、ドイツ語、フランス語、ラテン語を学ぶ。

 

◇ 東北大学文学部〜自分の関心を広げられる環境〜

 

ー文学部、そして心理学専修を選ばれた理由を教えてください。

 文学部を選んだ理由としては、専修が幅広いことと、入学してから専修を選べるということが大きかったです。入学する前、私は日本史や心理学など、いろいろなことに興味がありました。文学部は二年生から専修が分かれるんですけど、一年生の時はいろいろなことを学ぶことができます。だから、自分の興味のあることを複数学べる文学部を目指すようになりました。

心理学を選んだのは、純粋に人の心理に迫る研究が面白いと思ったからです。心理学の古典的な研究は高校生の頃から知っていて、例えば、ミルグラムの服従実験というものがあります。この実験は、本当は電気は流れていないんですが、罰として電流を流してくださいと言われてどこまで電流を強めるかという実験です。その中で、立場の強い人に電流を流すように言われると、危険なレベルの電流を流してしまうことがわかったそうです。それ以外には、授業の影響が大きかったですね。一年生の時に受けた心理学の授業がとても面白かったんです。心理学の中にもいろいろな分野があって、私は特に社会心理学の授業が面白いと感じました。日本史や語学にも興味はありましたが、これらは、大学での学びが自分の学びたい内容から少し外れていたので、最終的に心理学に決めました。

 

ー実際に入ってみて感じる東北大学の魅力はどのようなところですか?

まず、日本の中でハイレベルな大学であり、特に国際的な取り組みにすごく力を入れているところです。THE 世界大学ランキング 日本版で1位(2020〜2022)になった際にも、国際性の高さが評価された側面は大きいと思います。多くの留学生を受け入れていたり、海外に行く機会の提供が多かったり、国際的な関わりを持ちやすい環境が整っているところにとても魅力を感じます。

特に、留学関係のプログラムはおすすめなので、多くの学生に利用して欲しいです。留学のプログラムは長期と短期があるんですけど、まず短期だとSAP(Study Abroad Program)とFL(Faculty Led)というものがあります。SAPは、長期休み中に数週間から1ヶ月程度海外に短期留学するというプログラムです。私は1年生の終わりの春休みに、SAPでオーストラリアのシドニーにあるニューサウスウェールズ大学というところに行ったんですけど、それが初めての海外でした。そこで非常に貴重で刺激的な経験をたくさんすることができ、後に3年の夏休みからドイツに長期留学することにもつながりました。東北大学は留学の機会に恵まれていて、留学に行ける枠がとても多いんです。特に長期留学は、希望したところに行ける可能性が高いので、積極的に利用して欲しいです。

 

◇ 留学は、日本から始まる

 

ー留学に行こうと思った理由を教えてください。

留学に行きたいと思ったのは、中高での国際交流がきっかけです。中学生の時にはオーストラリアから、高校生の時には韓国から留学生が来て、その時から海外への憧れや、海外の人と話してみたいという思いが高まっていきました。当時、英語は全然喋れなかったんですけど、大学に入ったらそういう機会はたくさんあるだろうと思い、積極的に関わっていこうと思っていました。また、私は@homeという国際交流サークルに入ったんですけど、そこでいろいろな留学生と仲良くなれて、ますます海外への興味関心が高まっていきました。その後、今度は自分が海外に行こうと思うようになるんですけど、そう思うようになったのは、身近なところで留学生と交流する機会があったからですね。

 

ー@homeでの活動を通じて学べたことや今に生きていることは何ですか?

文化の違いを体感したことですね。海外の人ってかなりストレートで、つまらなかったらつまらない、行きたくなかったら行かないって言うんです。日本人だと気を遣って「楽しかった」みたいなこと言うじゃないですか。他にも、日本人は建前で「今度行こうね」とか言うと思うんですけど、海外の人は行かない時は行かない。でも今度行こうって言ったら本当に行く。そういうコミュニケーションの中で文化の違いを感じられたのはとても良い経験だったと思います。

それから、留学に行ったことがある東北大生にたくさん出会えたのも大きかったです。@homeには、留学から帰ってきた先輩がたくさんいて、実際に行った人の話を身近で聞けるというのはすごくプラスになりました。また、先輩はもちろんですが、同期でも海外に行く人が多く、とても刺激を受けました。留学中にも、同時期に他の国に留学に行っている友達の家に遊びに行ったり、その友達が遊びに来るなど、海外にいても@homeのメンバーとのつながりを感じましたね。

 

ー留学中の気づきや変化を教えてください。

短期で行ったオーストラリアでも、長期で行ったドイツでもそうなんですけど、授業中にめちゃくちゃ手を上げていたのが印象的でした。ドイツでは、150人くらいいる授業にもかかわらず、みんな手を挙げるので、全然授業が進まないんです。「質問ありますか?」って聞かれた時も、日本なら全然質問出ないと思うんですけど、海外だとたくさん質問していて、そういうアクティブなところが良いなと思いました。

留学で一番変化したのは価値観ですね。価値観がすごく広がって、多様な選択肢があるということに気づきました。日本では大学3年の後半から就活して、4年で大学を卒業して、就職して働く、という暗黙のルールみたいなものがありますけど、ドイツの大学は卒業する時期が比較的自由なんですよ。ドイツの大学は3年制なんですけど、4年、5年と学生をやってる人が結構たくさんいて、自分のやりたいことを突き詰めている、生き急いでいない、ということをすごく感じました。日本だと、そろそろ働かなきゃかなと思う時期が来ると思うんですけど、海外はすごく自由で、風習に囚われない自由な人生を歩んでいるのが自分の中で印象的で、影響を受けた部分です。

写真:SAPオーストラリア留学@ブルーマウンテンズ in 2018

 

 

ー留学に行く前にやっておいてよかったことはありますか?

語学の勉強ですね。私はドイツへ留学したんですけど、それはドイツ語での留学だったんです。ドイツの場合、ドイツ語での留学と英語での留学を選べるんです。ドイツ語で留学する場合には、ドイツ語の資格が必要になるんですけど、私は学部1年生でドイツ語検定3級、2年生で2級を取りました。私は心理学専修なので、ドイツ語は専門ではないんですけど、ドイツ語専門の人に負けないくらい勉強した記憶があります。ドイツ語にしろ英語にしろ、語学は留学へ行く前にいくらでも勉強できるので、そういう日本にいてできる準備はやったほうが良いと思います。ただ、それだけドイツ語を勉強して行っても、初めは何を言っているのか全くわからなかったです。英語でも同じだと思います。できる限りの準備はしたほうが良いと思いますが、語学は絶対に完璧にはならないので、思い切って現地に行ってしまうのが良いと思います。私自身、現地に飛び込んで洗礼を受けている中で、いつの間にか成長して、気づいたら外国語が話せるようになっている、という感じでした。

文学部では語学の授業をたくさん取ることができるので、私は必修の英語と第二外国語のドイツ語に加えて、ラテン語とフランス語も履修していました。語学に力を入れていたのは、何よりまず楽しかったからですね。いろいろな言語を学んでいると、共通する部分や違う部分が見えてくるんです。特にラテン語は、他の多くの言語の起源になっている言語なので、学んでいくうちに、この言葉はラテン語由来だったのかという気づきも多かったです。

写真:ドイツ留学中@チューリッヒ(スイス) in 2019

 

◇ 語学〜友と学ぶ、大学生にとっての「外国語」〜

 

ー一年生の中には、第二外国語は必修だから勉強しなければいけないという意識の人も多いと思うのですが、語学の面白さや語学の楽しい学び方などがあれば教えてください。

まず、第二外国語で話すことはすごく楽しいということを伝えたいです。現代はグローバル化が進んでいて、例えば誰かと2人で英語で話していたとしても、多くの場合、その会話の内容って周りの人にも大体伝わるじゃないですか。でも、2人でドイツ語で喋っていれば、周りの人は全くわからないんです。その時、2人だけの世界ができるような気がして、それがすごく良いなと私は思いました。ドイツ語を始めたのも、私の先輩でドイツ語が上手な先輩がいて、その人がオーストリア人の留学生とドイツ語で喋っている時に、かっこいいなと思ったからです。私もドイツ留学から帰ってきたら、そのオーストリア人の友達やドイツ人の先生とはドイツ語で喋っていて、英語で話すのももちろん楽しいんですけど、英語以外の言語で喋れるともっと楽しいということを伝えたいです。韓国ドラマも、韓国語でわかったら絶対楽しいじゃないですか。それと同じ感覚だと思います。

 

ー高校までは、言語(特に英語)を学ぶこと=テスト勉強に近かったように思うのですが、大学で学ぶ語学はそれとは異なるものなのでしょうか?

 大学で学ぶ語学は、これまでのいわゆる受験英語とは全くの別物です。大学に入るまでは英語を受験科目の一つとして学んできたと思います。そのために、英語ができる=頭が良いという捉え方がどこかにあるんではないでしょうか。だから、英語が話せない人たちは、自分は頭が悪いのだと思いこんで、英語が話せないことを隠そうとする。でも、いろんな人と関わっていくと、頭の良さと、英語が話せるかどうかはそんなに関係ないということが少しずつわかってくるんです。私自身その考えに囚われていた部分はあったので、みなさんには大学に入ってからの英語はこれまでの受験英語とは全く別物だと伝えたいです。

英語を間違えるのが怖い、恥ずかしいという人は、逆の立場になって考えてみて欲しいです。外国人が何か日本語を喋っていて、それが間違っていたとしても、その人は頭が悪いとは思わないし、むしろこちらから一生懸命理解しようとするんじゃないですかね。それと一緒で、私たちも間違っても良いから一生懸命伝えようとすれば、相手は必ず理解しようとしてくれます。つまり、受験で求められる英語とは全く違った性質を持った英語ということになります。これから使う英語は伝えるための英語なので、言ってしまえば文構造も言葉も間違っていて良いんです。というか間違いがあってもそこには興味が無いんです。興味があるのはあなたが伝えようとしている内容です。会話なんだからある意味当然ですよね。これから学ぶ英語は「伝える」ため英語だということを意識して、これまでとは全く違った新しいスタンスで英語学習に臨んでほしいです。

 

ー言語を学ぶモチベーションの保ち方を教えてください。

同じ目標を持った人や、一緒に勉強するパートナーを見つけるのが良いと思います。どうしても一人だと楽しくないし、続かないと思うので。私の場合は、一年生の終わりにドイツ留学に行こうと決めて、ドイツ人の先生に何をしたら良いか直接聞きに行きました。そこでオーストリア人の留学生を紹介してもらい、週に一回、一緒に勉強することになりました。その時、私はドイツ語ができなかったので、すべて英語で教えてもらっていて、英語力も同時に伸びたのでとても良かったなと思います。今は、ドイツ留学時代に仲良くなったメンバー5人くらいでドイツ語勉強会をオンラインで開催していて、5人のうち2人は今再びドイツにいます。この勉強会でドイツ語に触れる機会を作り、モチベーションを保ちながら継続的にドイツ語を学んでいます。やはり言語は継続することが何よりも大事です。使わないと忘れてしまいますからね。

また、語学の検定を受けるというのも一つの手です。私はドイツ語検定3・2級、フランス語検定4・3級を取ったんですけど、留学以外では日本の検定試験はあまり使えないんですよ。英検よりもTOEICやTOEFL、IELTSの方が使えるのと同じ感じです。だから、検定を取ることそれ自体にあまりメリットはないんですけど、目標を作るということが自分にとってはモチベーションになりました。合格に向けて勉強するときも、友達と一緒に頑張っていたので、周りを巻き込んで勉強するのは大切ですね。特にフランス語は留学先の言語でも無かったのでモチベーションを上げるのは難しかったのですが、フランスに留学予定の友達と一緒に勉強することで楽しんで学ぶことが出来ました。

写真:ドイツ留学中@ウィーン大学(ノーベル賞受賞者たちと)in 2019

 

◇ 挑戦と継続〜やりたいことをやるために〜

 

ー先生に直接聞きに行ったり、一緒に頑張る仲間を作ったりするのに抵抗を感じる人もいると思うのですが、人との繋がりを作るにはどうすれば良いのでしょうか?

案外自分は注目されていないというマインドでいると良いのではないかと思います。心理学の用語で、「スポットライト効果」というものがあります。これは自分にスポットライトが当たっているように思う錯覚のことで、例えば駅ですごく恥ずかしい転び方をしたとして、転んだ人は周りの目がすごく気になると思うんですよね。でも、周りの人からしたらそれってどうでもいいことなんです。人って実際以上に自分に注目が集まっているように錯覚してしまう傾向があるんです。だから、意外と自分って見られてないなと思えると、殻を破ることができるんじゃないかなと思います。もう一つは、ハードルの低いところからコネクション作りをするのも良いと思います。それこそ@homeをはじめとする国際交流サークルから少しずつ海外に触れていくのはハードルが低くて始めやすいのかなと思います。

 

ー学業、サークル、留学、語学と、いろいろなことをやっていて大変ではないですか?

大変です。ただ、自分がやりたいことなので、「充実している」と言った方が良いかもしれません。私の場合、1日中寝たり、ゲームしたりしていても楽しくないんですよ。いろいろなものを詰め込んで、忙しいけど楽しい、というような状態が自分には合っているのかなと思います。逆に言えば、それが楽しめなくなったらやめた方が良いと思います。あと、周りからは、全てが中途半端になるんじゃない、なんてことをよく聞かれるんですけど、逆に完璧になんてならないと言いたいです。例えば私は心理学を勉強していますけど、心理学を完璧に網羅することはできないですし、ドイツ語が完璧になるということもやはりないわけです。だから、中途半端になっても良い、むしろ中途半端以外にはなり得ないんだという気持ちで、興味関心をもとにやりたいことをやれば良いと思います。人間、ちょっと忙しすぎるくらいが一番輝いていると思うんですよね。

 

ー複数のことをやる上でのタイムマネジメント方法を教えてください。

まずは長期的な計画を立てることが大事だと思います。この時期にはこれに集中するというのを決めておくと、時間を有効に使えると思います。それから、1日の中でも、午前中に終わらせることと午後に終わらせることなど、時間で区切ってやることを決めると良いです。ただ、やっぱり午前中を有効に使いたいなとは思いつつも寝てたりするじゃないですか。私もそうだったので、友達と一緒に、朝8時半に図書館集合で、来られなかったら罰金三百円という感じで「朝チャレンジ」をしていました。何か規則を作って、自分がそれに従うと決めると、時間を有意義に使えると思います。特に、午前中を有意義に使えたら勝ちだと思います、1日は。

 

ーやりたいことを見つけるにはどうしたら良いと思いますか? 

大学4年間を通して見つければ良いと思います。私は、大学4年間は今後自分がどのような人生を歩みたいのかという指針を立てる時間だと思っているので、やったことがないことは全てやってみて欲しいです。私が何か決断をするときに大事にしていることは、リスクもあり、大変だけど、楽しそうな方を選ぶということです。決断をするとき、リスクは小さく大変ではないけどあまり楽しくなさそうなものと、リスクが大きく大変だけど楽しそうなものの2択であることが多くて、その中で私は後者を選ぶようにしています。多分、年を重ねていくと、安全な方をとった方が良い場面が増えていく、だからこそ若いうちはリスクをとって挑戦していった方が楽しいと思います。それでとにかくやってみて、そこから何を感じたかといったことから、自分の興味のあることが見つかってくるんじゃないかと思います。

 

ー奥山さんご自身の将来について教えてください。

私は将来研究者になりたいと思っています。文系学生は9割くらいが就職して、大学院に行くのは1割くらいなんです。そこから博士過程に進む人はもっと少ないので、かなり珍しいと思います。今後研究したいのは文化心理学という分野で、文化の異なる人々の「心の文化差」というものを心理学的に解明して、異文化理解に繋げていくという学問です。

以前は、高校の先生になりたいと思っていましたが、それだと国際的なことがあまりできないと感じ、研究者や教授という職業に関心を持つようになりました。研究者になるのはすごく大変なんですけど、実際になった暁には、好きなことをやってお金をもらえるのがすごく魅力的ですよね。研究者は大変だって言う人もいると思うんですけど、私は好きなことを仕事にできるのが一番だなと思います。

ただ、それは私の場合で、やりたいこと、好きなことが必ずしも仕事に結びつかなくても良いと思います。やっぱり、やりたいことを仕事にするのはなかなか難しいし、もし仕事にできたとしても、自分の思っていたことと違う業務に追われる場合もあると思います。例えば研究者なら、事務作業に追われる場合があります。やりたいことがあったときに、それを仕事にするのか、趣味にするのか、はっきりと分けておくことも大切だと思います。

 

ー最後に、来年度の一年生に向けてメッセージをお願いします!

大学は自由です。これまでは決められた授業を受けて、部活に行って帰るということの繰り返しだったと思うんですけど、大学に入ってからは全てあなた次第です。もちろんそこには責任も伴いますが、可能性が大きく広がり、挑戦する機会がたくさんあります。大学に入るまでは、「勉強が大事だ」というような教育を受けてきたと思うんですけど、これからは人との繋がりであったり、社交性という部分が大事になってきます。せっかく、東北大学という多くの学びの機会に恵まれた環境を手に入れたので、少しでも興味のあることに積極的に挑戦していってほしいです。さまざまな機会をフル活用して、大学生活を楽しんでもらえたらと思います。

写真:イスラエルのヘブライ大学を研究訪問した際@嘆きの壁 in 2023