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先輩の声

しんどい事が出来るのは大学生の時だけ!―学業と課外活動の両立によって得られるものとは?―

新田 友海 (NITTA Yu)

医学部医学科 2年

甲子園球場のある兵庫県西宮市出身。

現在は、東北大学医学部医学科に在籍しながら、「inochi WAKAZO Project」などの

課外活動や医療団体でのインターンに積極的に参加している。

灘中高出身で、中高生時代から積極的に課外活動に取り組んできた。

 

インタビュー実施:2021年11月11日


◇積極的な課外活動

現在一番力を入れて取り組んでいることは何ですか ?

inochi WAKAZO Projectという医療系の団体での活動です。この団体では、1年ごとにテーマを変えながらヘルスケア課題を設定し、そのヘルスケア課題を解決するための社会実装案を全国の中高生と医学生が一緒に考えていくという活動をしています。

 

inochi WAKAZO Projectを運営する中で苦労された点はありますか?

運営は基本的に大学生が行うので、報酬なしに全ての仕事をしなければならないのが大変でした。しかし、大学生のみで運営していることでのメリットもあり、社会人が介入しないので利権が発生しにくく、純粋に活動できることは良いと思っています。

写真:学生団体inochi WAKAZO Project i-GIP KANTOのメンバー

 -現実的な部分として、企業をある程度巻き込んでいくことも必要だと思うのですが、どのように工夫されていましたか?

実現した例として「フレイルへの支援」があります。「フレイル」というのは高齢化の中で完全に老衰しきってしまう状態の一歩手前にいる人のことです。実際に高齢者の方々にお話を伺いましたが、その中で例えば、「長生き出来る薬があればいい」といった漠然とした提案があっても、実現性が低いので、服用頻度・価格など具体的なところまで細かく掘り下げて需要を調査しました。

その後で自治体や企業に協力をお願いするのですが、本当に困っている人がいて、助けたいという熱意をもってプレゼンをすることで動いてもらうことが出来たと思います。

 

他にも医療系のインターンに参加していると伺いましたが、そこではどのような活動をされていますか?

とある医療団体が、一つの地域に一つの病院があるとその病院が地域医療の様々な機能を担え、地域全体が健康になるというポリシーを持っていて、東京の八王子で脳神経外科の医師がそのような活動をされていました。

これを宮城県の東松島市で実施しようという動きがあり、クリニックが主体となってホテルやレストラン、岩盤浴の施設なども含めた複合型の施設を建設しました。私はそこの運営や広報イベントの手伝いをやっています。

写真:インターン先の施設(外観)

 

 

インターンをやる中で面白いと思った事は何ですか?

沢山の医療スタッフと、市民も高齢者だけではなく、そのお孫さんなど、様々な地域住民の方と交流出来たことです。また、お話を聞く中で地域医療の実情を実感出来たのも良かったと思っています。

例えば仙台市内なら公共交通手段が発達していて病院に行くことが物理的に不可能ということは起こりにくいですが、その地域では高齢者は徒歩でしか移動出来ず通院が困難な場合があり、送迎を行って市民の交通手段を確保しているということがありました。また、あらゆるサービスが一ヶ所に集約されているのも印象的でした。

写真:インターン先の施設(内観)

 

なるほど、それは貴重な経験ですね。それぞれの活動に参加することになったきっかけを教えてください。

情報収集はTwitterやInstagramを使っていました。inochi WAKAZO Projectでは、オンライン新歓などに参加してお話を伺えたのが良かったと思います。また、インターンについては高校の先輩が八王子の方でインターンをしていて東松島の方も仕事をしていたのでそれを引き継いだ形になります。

 

外部の活動に参加する中で得られたものはありましたか?

まず事務的なスキルが身につきました。大学の授業でレポートを書くことがあればwordを使う機会はあると思いますが、そのほかにExcelや動画編集ソフト、人によってはデザイン、プログラミングなど、大学の授業で学ばないスキルが必要なのでそれらを学べるのは良いと思います。

また、同じ志を持つ仲間で勉強会や他の人の講演会に参加できるのも良いと思います。勿論同じ大学の学生間でも勉強の話題は出来ますが、自分に合った分野を勉強できたり、カリキュラムが異なる他の大学に通っている人の意見を取り入れることが出来るのが良いと思います。

 

◇中高生時代の活動で培った広い視野

 

中学高校の頃に熱中していたこと、一生懸命取り組んでいたことはありますか?

中学生の頃は3年間水泳に打ち込んでいました。高校に入ってからは生徒会を頑張るようになり、主に文化祭の活動に注力していました。学校内の文化祭の活動はもちろん、関西の他の高校の文化祭実行委員と交流する団体を運営し、最終的には自校の文化祭の委員長として文化祭をより良いものにするべく頑張っていました。

また、灘高校では先輩後輩のつながりが強く、OB訪問で様々な専門家の方々のお話を聞き多くの分野に触れることも中高を通して取り組んでいました。

 

すごいですね。他校の人との関わりをどう自校の文化祭に活かしていたのですか? 

例えば、ステージの企画ひとつとっても、例年同じような企画になっていましたが、他の高校の面白い企画を真似したりとか、灘で今までなかった案内装飾があるということを知れたりしたのが良かったです。

他にも人事組織のあり方、実行委員長が担うべき役割などについても知れて、他校のエッセンスを上手く灘の文化祭に取り込む事が出来たと思います。

 

OBとのつながりについては具体的な取り組みはありますか?

学校の授業の一環で、様々なOBの方々が自分の職業やその分野の面白いところについて授業をしてくださる土曜講座というものがありました。灘は医学部進学率が高くて何となく医学部行きがちなところもあるんですけど、ベンチャーで起業された方やアナウンサー、弁護士、エンジニアなど色んな世界を見た上で進路決定することが出来て良かったです。

 

様々な業種を見てきた中で、医学部医学科を選ぶことにした理由を教えてください。

様々な業種を見る中で社会を動かす、支える仕事をしたいという思いが一番心の中にありました。では何の分野で社会を変えようと思った時に、自分に何か関係してるところで変えたいと思いました。自分に全く関係がない問題に取り組もうとしても、モチベーションが続かないと思ったからです。自分に一番関係ある分野は、人間は必ず病気にかかり、死ぬことになるので、医療だと思いました。

あとは、医師の方々の「ワクチン接種をお願いします」といったメッセージが説得力があるように、医師という肩書きを得ることで少し説得力が増す事があると思います。私が社会を動かしたいとなったときに医師という肩書きが少し大事になってくると思ったのも動機の一つです。

 

東北大学を選んだ理由についてはどうですか。

まずは、優秀な人に会いたいと思っていました。中高時代は優秀な同級生や先輩方に会わせてもらったので、大学でもそういう人に会いたいと思って、できるだけ頭のいい、旧帝大などに行きたいと思っていました。

その中で東北大を選んだ理由としては地域医療ができそうだということと、研究者志望が多いことがありました。地域医療や研究の世界も知りたいと思っていたからです。

 

◇日々の過ごし方

大学に入学したばかりの時はどう過ごしていましたか?

同じ学校から医学科に来た人がいなくて、学年の中で知り合いがいなかったので不安だったんですけど、SNSで顔も知らない同級生と交流したり、オンラインで勉強会をしたりして対面で会ったことはないけど知り合える友達が出来たのが良かったです。また1年生の間に学年代表を務めたので、多くの医学科の人と交流出来たのも良かったと思います。

 

苦労された点や後悔のあった点はありましたか?

大変だったこととしては、冬が寒かったことですね。私は冬が暖かい地域出身で、一人暮らしが始まって不安でしたが、同じように暖かい地域から来た友達が沢山いたので、今はそのような不安も特になく過ごしています。また、オンライン授業で他学部の人との交流が減ってしまったので、全学の部活やサークルに入っても良かったと思っています。

 

大学の授業についてですが、今はどのような授業を受けていますか?

今は基礎医学と呼ばれる分野を学んでいます。ヒトの体にどのような部位があるか見たり、細胞の正常な状態や異常な状態を観察したり、どのようにヒトの体は動いているのかを見たりしています。実際の医療の基礎の部分を主に勉強しています。

 

特に面白い授業はありましたか?

特に面白いと思ったのは、薬理学です。薬理学では薬がどのように効くかを勉強するのですが、授業の中で新薬の発見で沢山利益が出たという話があり、利益が出るということはそれだけ需要がある偉大な発見だったと思い、医学は日々進歩する新しい学問なんだと印象に残りました。

 

課外活動はかなり忙しく大変だと思うのですが時間配分などはどのように工夫されていますか?

最初に言っておくと、かなり大変です。ただ、大変なことが出来るのは大学生の時だけだと思います。睡眠時間を削って夜中遅くまでやるのは大学生だからできることだと思います。勿論大学生なので授業は大事ですが、例えば徹夜した後に授業を受けてもちゃんと頭に入っているなど、両立が出来ていれば大丈夫だと思います。

ただ、社会人になってくるとこれは絶対にしんどいと思います。大学生は様々なことを同時にできる体力的にも時間的にも最後のチャンスだと思うので、頑張っています。

 

休みも大事だと思いますがどう思いますか?

休みも大事だと思います。ただ社会人の方に比べると、平日全部授業で埋まっていることはないので休みの時間も取れるのは、いいことだと思っています。

 

なるほど。日常生活での過ごし方について、1年生にアドバイスをお願いします。

1年生の内に遊んだ方が良いと多くの先輩から言われて、実際春休みを中心に沢山遊びました。医学科では2年生から忙しくなり、他の学科でも3年生や4年生で忙しくなり遊べなくなると思うので良いアドバイスだったと思っています。

また、1年生の間に自炊をやった方がいいというアドバイスも頂いて、最低限の料理のやり方を覚えておきました。そのおかげでやろうと思ったらいつでも自炊が出来るというのが一人暮らしをする上で良かったと思っています。

 

具体的に1年生でどんな遊びをしていましたか?

 私は春休みに3日連続ぐらいでスノボに行き、その間に徹夜でカラオケに行っていました。今考えればどこからそのような体力が出てきたのか不思議ですが…。東北大学はスキー場に行きやすいので、1年生を終えて春休みになったときには是非雪山に行ってみてください。

 

1年生の時の自炊については何かエピソードはありますか?

一人暮らしを始めて2週間後ぐらいで、ようやく自炊にも慣れてきたと思った時に、水を入れないまま鍋をIHにかけてしまって、鍋を壊してしまったことがありました。これが一人暮らしを始めて最初の挫折で、料理にも気を配らないといけないという戒めになりました。

 

将来の夢を教えてください。

将来の夢としては、厚生労働省の医系技官という形であったり、官僚や政治家ではなくても社会に発信力のある医師になりたいと思っています。勿論人の命を救うという観点で、自分の手術のスキルを高めたり、新しい薬を発見したりするのも大事なことだと思います。

しかし私は、医療先進国の日本で需要が意外と発掘されていないところに需要を見いだしてサービスを届けるなど、大局的な観点で人を救えるような医師になりたいと思っています。

 

将来の夢に向けて意識していることはありますか?

まず官僚についてですが、官僚は一つの部署にずっと所属するわけではなく、異動があるようなので、それに備えて、様々な分野、社会の医療の問題を発見しておきたいという事を意識しています。まだ私の中で絶対に解決したい問題が1つに定まっているわけではないのでとにかく様々な社会の問題を見ていきたいと思っています。

あとは、医療団体や病院でインターンをさせてもらって自分で実際に現場を見ることで、社会の様々な医療問題を考えていきたいと思っています。例えば、先ほど高齢化の話をさせて頂きましたが、それ以外にも子供の問題や、新型コロナウイルスをはじめとする感染症の問題など、様々な分野に挑戦したいと思っています。

また、私はこの1年、東北地方、特に仙台ならではの医療問題を見つけて解決策を見いだすことを目標に掲げています。

 

最後に、1年生に向けてメッセージをお願いします。

まずは東北大学の入学おめでとうございます。新しい勉強ができる、新しい出会いがあるなど楽しみにされていると思います。大学では様々な過ごし方があり、大学の勉強を極めたり、部活を極めたり、様々な選択肢があります。

私はその中で課外活動をお勧めしたいと思います。大学の外に出ることで、自分の純粋にやりたかったことをもっと極めたりとか、自分の興味のあることに近い人とつながれたりします。

ただひとつ意識してほしいのが、あくまでも東北大生であることは忘れないでほしいということです。私も医療団体の中で例えば東北にいるから震災のリサーチをしたり、東北大学だから出来ることを発信したりしています。東北大学の環境をしっかりと使った上で、学生団体やボランティア団体など外部の活動にもチャレンジしてほしいと思います。