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先輩の声

世界を広げる、没頭するために大学生活を

勝山 湧斗 Yuto Katsuyama
(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)

茨城県水戸市出身。東北大学工学部化学・バイオ工学科に入学し、カリフォルニア大学バークレー校への交換留学を経験する。留学後、本格的に海外大学院進学の準備を始め、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の博士課程プログラムに進学する。電気自動車や再生可能エネルギーに使用される高性能電池を豊富な資源(有機物など)を用いて作ることを目標に研究している。

◇アメリカでの大学院生活
-現在の所属と専門について簡単に教えてください。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(以下UCLA)の化学科に所属しています。Department of Chemstry and Biochemistryの博士課程(Ph.D Program)です。アメリカのPh.Dプログラムは5年間で、今は2年生です。専門は化学で、特に材料化学を専攻しています。具体的には、材料化学の知識を使って新しい蓄電池を開発する研究をしています。

-まず、UCLAでの大学院生活についてお聞きしたいです。1週間のスケジュールを教えていただけますか。

1年目の学生は多くの授業を履修します。週に5、6回授業があり、それぞれ授業時間が2時間で、かなりの量の宿題が毎週課されます。研究が生活のベースになるのは2年生からです。大学に行く時間も大学から帰る時間も自由です。大学に着いたら論文を読む、研究をする、実験で得られたデータを見ながら同期や教授たちとディスカッションをします。

-具体的にどれくらいの時間を授業に費やしていたのですか。

東北大学工学部の学部生の忙しさが大学院1年目の生活に相当すると思ってもらって大丈夫です。日本の大学院だと宿題は少ないと思うのですが、アメリカの大学院では学部と同じように多くの課題と筆記試験が課されます。ただ、日本とアメリカでは授業の数が異なっています。私の記憶では、東北大学に在籍していたときは1クォーター10科目くらい履修していましたが、アメリカの場合は4科目くらいしか履修しない代わりに1つの授業が週に2~3回あります。それぞれの科目ごとに週6~8時間程度の時間を費やせば終わるくらいの宿題の量でした。

-費やしている時間を1日に落とし込むとどのようなスケールになりますか。

大学院1年目は、1日の作業時間の3分の1が授業、3分の1が課題、3分の1が研究という感じですね。

-大学院1年目の学生が履修する授業というのは、具体的にどういう授業なのですか。

例えば、学部の電気化学の授業では基本的なアレニウスの式や電気二重層などを学ぶ一方で、大学院ではそれらの知識を使ってどのようにして電気化学的現象を読み解いていくのかを実践的に学びます。

-履修する授業は専門の授業だけなのですか。

アメリカでは専門外のコースも履修します。例えば、私のPh.Dプログラムでは、ティーチングに関する授業や研究倫理、研究を遂行する上での安全管理、アカデミックライティングなどの授業を学期を通してしっかりと学びます。自分の専門だけでなく、その脇にあるものもしっかりと学んでいくのがアメリカのコースの特徴だと思います。

-Ph.Dを取得するために必要な授業だけではなく、Ph.Dを取得した後に実際に研究者として生きていくために必要なことを学ぶ授業もあらかじめカリキュラムの中に含まれているというわけですね。

やはり、博士たるもの研究ができるだけでは不十分で、しっかりとした倫理観を持ち、安全に研究を遂行することができ、自身の研究成果を的確に他人に伝えられる、そういう多様な能力を身に付ける必要があるということをアメリカに来てから感じています。

-そのカリキュラムの仕組みは非常に興味深いですし、将来を見据えた上でも重要なことだと思います。研究の合間のリフレッシュとしてやっていることはありますか。

今年の夏からサーフィンを始めたので、同級生とロサンゼルスやサンディエゴにあるビーチに行ったりします。あとは、ギターも始めました。アコースティックギターの練習をしています。博士課程の5年間は長距離走だと思っているので、集中的に研究を進めるというよりは、ゆっくりでも常に5年間走り続けるために、定期的にストレスを発散させる生活を心がけています。

-サーフィンやギターは研究活動とのバランスをとるために意識的にやっていることということですか。

そうですね。注意しないと土日も研究室に行ってしまいますし、平日も深夜まで研究してしまうので、意識的に遊ぶようにしています。

-ワークライフバランスの取り方のコツみたいなものはありますか。

将来のことを想像するようにしています。私は今25歳ですが、仮に80歳まで生きるとして、残りの人生約55年、サーフィンができる生活とサーフィンができない生活、ギターが弾ける人生とギターが弾けない人生を比べた時に、絶対に後者の方が充実していて楽しいだろうなって思うんです。そう考えると、空いた時間にギターの練習をしようと思えます。将来のことを想像して趣味を広げたり深めたりすることを考えています。

-すごく抽象的な質問ですが、アメリカでの大学院生活はどうですか。

すごく楽しいです。良い意味で他人に興味がない、何をやっていても干渉しない、そういう環境がアメリカにはあり、それが自分に合っているので気楽にのびのびと生活できています。また、給料をもらいながら研究できるので、生活や心に余裕があります。アメリカに来てよかったと思います。

-アメリカの大学院に来て出会った人の中で、印象的だった人はいますか。

自分が所属している研究室の教授ですね。学問に対する知識量が非常に豊富で、信じられないほどの研究成果を出していて、世界への貢献度が高い、そういう人に出会えたことで、自分もこういう人になるために頑張ろうと思うようになりました。

-博士号を取得した後にやりたいことはありますか。

博士号を取得した後1〜3年くらいはアメリカで働いてみたいと思っています。企業で働くのか大学で働くのかはまだ決めていませんが、自分が楽しいと思えるような環境で働いてみたいです。ただ、自分の中では家族が最も大事な存在なので、いつかは日本に帰ってきてみんなと生活がしたいと考えています。

◇有機物から蓄電池を作るために
-新しい蓄電池を開発するための研究をしているとのことですが、それについてもう少し詳しく教えてください。

例えば、手元にあるiPhoneに使われているリチウムイオン電池は、リチウムやコバルトを材料にして作られています。こういった金属はレアメタルと呼ばれていて、地球の特定の場所にしか存在しない上に採れる量も少ない、希少な金属です。しかも、コバルトは紛争地域でしか採掘できない金属です。また、コバルトの採掘は多くの環境問題を引き起こしています。電気自動車や再生可能エネルギー向けの蓄電池を製造するために大量の電池が必要になったとしても、製造できる数に限りがあったり、コストがとても高くなってしまったりするので導入が難しくなることが予想されます。そこで、私は有機物から電池を作ることを目標にして研究を行っています。有機物はどこにでも豊富に存在する基本元素(炭素・酸素・窒素・水素など)からできているので、研究がうまくいけば、レアメタルを使用せずとも蓄電池を生産することができるようになります。

-新しい電池を作る研究に取り組もうと思ったのはなぜですか。

私の原体験は中学2年生の時に経験した東日本大震災です。私の父は原子力発電の研究者で、当時原発事故が起こった時に父は1ヶ月くらい家に帰ってこれませんでした。また、電気も水も使えず、冬の寒い時期に家族でろうそくを囲んで生活する日々が続きました。そうした経験から、大規模集中型発電(原子力発電や火力発電により一か所で発電し、広いエリアにエネルギーを供給するスタイル)によって生じているリスクについて意識するようになり、再生可能エネルギーを利用する発電所を各地に立ててリスクを分散させることが重要だと思うようになりました。ただし、再生可能エネルギーを利用するということは、発電量が一定ではないという問題を解決するための技術が必要だということを意味します。風力発電なら、風が強い日は発電できますが、風が吹かない日は発電できません。太陽光発電も、曇りや雨の日は発電できません。発電した電力を溜め、発電量が下がっている時には溜めておいた電力を供給して足りない分を補うためには大量の蓄電池が必要になりますが、先ほども話した通り、現在の蓄電池はレアメタルを使用するので、すべての発電所に大量のリチウムイオン電池を設置することは難しいです。仮に作ったとしても、コストが高く経済的ではないため持続可能ではありません。ですので、もっと安価で大量生産が可能な高性能電池を開発する必要があります。そこで私が目をつけたのが有機物を使った電池です。大量生産可能で、コストを抑えることもできる。以上が有機物を使った電池に興味を持った理由です。

-東日本大震災という切実な経験と、現在のエネルギー問題の両方が研究の推進力になっているのですね。卒業論文も同じテーマを取り上げたのですか。

卒業論文では木を使った電池について研究しました。以前の日本では木が貴重な燃料だったので林業が盛んでしたが、現在は木の価値が大幅に下落したせいで森林が管理されなくなっており、森が虫を媒体とした感染症に罹るようになってしまいました(ナラ枯れなど)。森を管理するためには定期的に間伐する必要があるのですが、間伐した木の用途がないので、間伐する経済的なメリットがありません。それならば木を使った付加価値の高いものを作ろうと思い、木を使った電池を開発する研究をしていました。

-なるほど。木を使った電池から有機物を使った電池へと興味が進展したのですね。今の研究を進める中で面白いと感じていることはありますか。

やはり、誰も目をつけていないところに目をつけてそれが良い結果を出した時、良い性能を示した時は「よっしゃ!」と思いますし、自分の存在意義を感じることができます。研究というのは、以前に誰かが行った研究を使って別の誰か何かを発見して、それを使ってまた別の誰かが別の何かを発見して、ということの積み重ねだと思っています。たとえ自分がこの世界にいなかったとしても、別の誰かが過去の研究をもとに新しい何かを発見していくのだろうとは思います。それでも、「自分がいなかったらできない研究とはどんな研究なのだろうか」ということを考えたときに、とてもユニークで誰も目をつけていないところに着目した時、それを発見できた時はとても嬉しく思いますし、自分の存在意義を感じることができます。

-世界中の研究者が鎬を削っている中で、自分だけの独自性を示すことができた時が楽しいということですね。反対に、研究の中で苦労したり、辛いと感じることはありますか。

それは、産みの苦しみというか、誰も目をつけていないところに目をつけて研究するということですね。それがすごく大変なことです。自分がパッと思いついたことは必ず誰かがすでにやっていることです。誰も思い付かないようなことを考え出す苦しみというのはここ数ヶ月ずっと感じています。

-それはすごくわかります。例えば、パッと思いついたキーワードをGoogle scholarに打ち込むと海外の論文がたくさんヒットして、「やっぱりみんな研究してるのか」と落胆するというのは大学院生なら誰しも経験があるのではないでしょうか。それは本当に難しいことだと感じます。それをどう乗り越えていくのかというのは全ての研究者、研究者を志す大学院生が直面する課題だと思うのですが、勝山さんはどのようにしてその壁を乗り越えようとしていますか。

一番手っ取り早いのは「組み合わせ」だと思います。例えば、どこかの研究グループが発見したAというものと、自分たちの研究室がもっているBという技術を組み合わせてもっといいものを作る、みたいなことですね。もしも自分の研究グループが唯一無二の技術を持っているならば、その技術を別の何かを組み合わせることで自分たちにしかできない研究を行うことができると考えています。

◇徐々に固まっていく留学への決意
-東北大学工学部化学・バイオ工学科を選択した理由を教えてください。

高校の頃に勉強していて一番面白いと感じたのが化学でした。ものを分子や原子のレベルで自由自在にコントロールできるとしたら、それはすごく面白いことだろうと思い、化学を選択しました。そして、東北大学は材料科学の分野において日本で1番の成果を出している大学です。化学の観点から材料科学をやる上で、東北大学は最高の環境です。茨城県の実家から近かったということも関係していますね。以上が東北大学を選択した理由です。

-大学1年生の頃から留学に興味があったのですか。

当時は海外の大学院に進学することは想像もしていませんでした。私が海外を意識するようになったのは、学部1年生の時にとても良い先輩方に出会えたからです。ユニバーシティハウス三条に住んでいたのですが、その時のユニットメンバーに博士課程1年の先輩がいました。その人が自分をいろいろなところに連れて行ってくれたり、留学している先輩を紹介してくれたりしたので、見える世界が徐々に広がっていきました。自分が知らなかっただけで、外にはこんな世界があるということを知り、次第に留学と学問に興味を持つようになっていきました。

-人との出会いによって今のキャリアが見えてきたのですね。大学生になって世界が広がったとおっしゃっていましたが、大学生になって経験したことで楽しかったことや印象的だったことはありますか。

一般的にそうだと思うのですが、高校生の頃は周囲に留学生はほとんどいませんでした。大学に入って多くの留学生と出会い、英語でコミュニケーションをする中で、自分の世界が広がったと感じることができました。また、実践的に英語を使う中で、もっと英語を学んでもっと世界を広げたいと思うようになり、IPLANETという団体に入りました。毎日のように留学生たちと関わって遊んで英語でコミュニケーションをする中で、自分の英語の能力がどんどん伸びていくのを感じましたし、外国の文化についても知ることができました。自分の大学生活で最も楽しかったし、大学生活の基盤でもあった部分です。

-反対に、不安だったことはありますか。

大学の授業についていけるのかどうかですね。最初の学期の成績が出るまで本当に不安でした。

-どういうふうに乗り越えたのですか。

先生に頼り、友達と一緒に勉強しました。先生に質問すればわからないところを教えてもらえるし、一緒に勉強したり分からないところを教え合って解決していく仲間もいました。先生に質問し、仲間と助け合いながら授業に取り組んでいく中で、学問に対する不安はなくなっていき、最終的には化学って面白いなと思えるようになりました。

-一緒に勉強する仲間は大事ですよね。授業が専門的になると一人では解決できないことも出てきますし、そういう時に頼れる仲間がいるというのは心強いです。東北大学での4年間で最も印象的だった経験を教えてください。

東北大学の交換留学の制度を使って1年間カリフォルニア大学バークレー校に留学した経験です。バークレー校に留学してくるのは各国のトップレベルの学生が多く、本当に生きている世界が違う人たちだらけでした。頭の作りが違うんじゃないかと思うこともありました。そんな優秀な学生たちに囲まれて1年間過ごして、「自分には何ができるのだろうか」ということをすごく考えました。もう本当に打ちのめされていました。ただ、僕を打ちのめしてきた優秀な学生と議論し合いながら日々過ごしていく中で、自分に足りないものや欠けていることを自覚し、そこを強めていくためには何をすればいいのかを考え実行することで、少しずつ成長できたと思います。

-バークレー校に行く前と後でかなり変わったところがあるということですね。交換留学を決意したきっかけはなんだったのですか。

それはやっぱりIPLANETでの経験です。留学生と交流する中でより広い世界を知りたいと思うようになり、交換留学を考えるようになりました。ただ、当初は躊躇していたのも事実です。私の所属していた化学・バイオ工学科には、3年次から留学する場合は必ず留年しなければならず、友人たちが進級する中で留学した自分だけが留年したら、次の年からどうやって勉強していこうか、友達のいない授業は受けられないなと思っていました。そういう不安を留学を経験した先輩に相談したら、「そんな小さいことで悩んで小せぇ人間だな!そんな理由で留学行かなかったら本当に後悔するよ」って言われて、帰国した後に授業を一人で受けることが不安だからっていう理由で留学に行かないのは本当にもったいないと僕自身も思いました。その一言が背中を押してくれて、交換留学をする決意が固まりました。

-留学した後に孤立してしまうことを不安に思って留学に行かないのは本当にもったいないということですね。東北大学での生活、UCLAでの生活を通じて、学部1年生あるいは早い段階で取り組んでいた方が良かったと感じていることはありますか。

まずは英語ですね。留学するしないにかかわらず、将来的に英語を使うことになる可能性は高いと思います。ライティングも大事ですが、東北大学の入学試験では問われないリスニングとスピーキングに力を入れた方がいいと思います(自分もそうでしたが、日本人大学生は恐ろしくこの二つができない)。もう一つは学業だと思います。東北大学はカリキュラムがしっかりと組まれていて、期末試験もヘビーなものが多いので、しっかり取り組めばしっかり学問が身につきますし、それが海外に出て行ったときの強みにもなります。例えば、学部生の卒業論文ですね。アメリカの大学では学部生は研究室に配属されないので、研究経験がないまま大学院に入り、研究アイデアや研究スキルがないことに苦しむこともあります。その点、卒業論文を経験している東北大学の学生は有利です。東北大学のほとんどの学部で卒業論文が課されているので、先生方に指導されながら自分の力で研究を遂行する経験を学部生のうちに積むことができます。ある程度研究を遂行する能力がついた状態で留学をスタートさせることができるのは強みになります。学部生のうちに研究を遂行する能力をしっかりと養成しておくことは、将来役に立つことだと思います。

◇海外大学院への挑戦
-ここからは海外の大学院進学についてのお話を聞いていきたいと思います。先ほどユニバーシティハウスに入って博士課程の先輩と出会ったことが海外を意識するきっかけになったとおっしゃっていましたが、具体的に海外の大学院進学を将来のキャリアとして意識し始めたのはいつごろだったのでしょうか。

確かに、ユニバーシティハウスで先輩と出会い、色々な経験していく中で大学院の博士課程に進学したいと漠然と思うようになっていたとは思います。ただ、海外の大学院の博士課程に行きたいと思うようになったのはUC Berkeleyでの交換留学中です。アメリカの大学院では授業料が全て免除になり、しかも月30万円くらい給料がもらえるということを知り、日本の大学院に進学するよりも魅力的に感じました。それで、海外の大学院への挑戦を決心しました。

-本格的に大学院進学の準備を始めたのはいつですか。

海外大学院進学の準備を始めたのはバークレー校での交換留学を終えた学部3年生の夏からです。海外の大学院に進学するには研究成果、TOEFLのスコア、海外大学とのコネクションが重要になります。

-それぞれについて勝山さんが取り組んだことを具体的に教えていただけますか。

研究成果を出すことを考えたときに、学部4年生の春から研究を始めても秋の大学院のアプリケーションに間に合わないので、少しでも早く研究に着手するために学部3年の夏ごろから研究室のアルバイトとして研究を始めました。4年生の春過ぎくらいに成果を出すことができたので、4年生の夏の学会でその成果を発表し、その後論文をパブリッシュしました。そのおかげで、アメリカの大学院出願時にFirst Authorの論文を一本持つことができました。それが強みになったと思います。

-帰国してからは研究成果を出すためにかなり忙しかったのですね。学業という点で、研究成果以外にも留学する際に必要だったことについて教えてください。

GPAは低くても大学院に合格している人は多数知っていますが、やはり高いに越したことはないと思います。東北大学の成績評価でA以上は取れるように勉強しておいた方がいいと思います。あとはTOEFLのスコアですね。大学院によって要求されるスコアは違いますが、TOEFL iBT88点がアメリカの大学院に出願するための最低限のスコアなので、少なくともそこは絶対に越えられるように勉強しておくべきです。

-高いGPAを維持しつつ、TOEFLのような外部の英語試験でも要求されるスコアを満たすことが大事になるのですね。TOEFL以外にスコアが要求されるテストはありますか。

理系の場合、GREという試験がありました。ただ、GREは必要ないという風潮もあり、特にノンネイティブの外国人留学生のGREの国語のセクションを重視しない大学も多いので、私は勉強しませんでした。その代わり、GREの数学セクションとライティングセクションはしっかりと点数を取れるように勉強しました。数学セクションでは高校数学レベルの問題が多く出題されるので、2週間くらいしっかり勉強すれば良い点数が取れると思います。ライティングセクションは結構シビアで、ライティングができない学生が入ってくると論文を書くうえで苦労するから5点満点中最低3.5点は取ってくれという先生もいます。必死でライティングの構文を覚え、英作文で使われる表現を暗記して対策しました。私は3.5点でした。

-GREのライティングセクションの対策はそのままTOEFLのライティング対策にもなるのではないかと思ったのですが、実際に対策してみてどうでしたか。

ライティング対策は両方兼ねられると思います。

-研究成果、TOEFLとGREのスコア以外に、申請する上で準備しておくことはありますか。

奨学金を取ると大学院受験がかなり楽になります。奨学金がなくても合格はできるのですが、奨学金がある学生には大学から給料を払う必要がないので、選考で有利になります。また、奨学金に申請する際に作成した志望理由書や研究に関するステートメントを英訳することで、大学院に出願する際に必要な書類が完成します。

-最後に、海外の大学とのコネクションの築き方について、実際に勝山さんがしたことについて教えていただきたいです。

私は海外大学進学希望者向けに文部科学省が主催していた国際学会参加支援プログラムに申請しました。学会参加費と往復の航空券とホテル代を支援してもらえるプログラムです。それを利用してInternational Battery Associationという国際学会に参加しました。そこで、進学を考えている大学の先生方と実際にお会いし、お話をして、後日フォローアップEメールを送り、コネクションを作りました。その後に、奨学金を取りましたとメールをすれば、ほとんどの先生からは「よくやった」という返事が返ってくるので、あとはアプリケーションを出せば合格できると思います。

-確かに、国際学会等に参加しないと海外の先生には会えないですよね。

支援事業がなかったとしても、私は自腹で国際学会に参加していたと思います。ただ、現在はオンラインイベントが多いので、以前よりも交流できる機会は増えているように思います。

-海外の大学院進学に興味がある学生に向けて、アドバイスをお願いします。

英語の勉強をしっかりとしておいた方がいいと思います。私がアメリカの大学院に出願した時点でのTOEFLのスコアは95点くらいでしたが、100点を要求する大学も多く、足切りで出せなかった大学もありました。英語をもっとしっかりとやっておけば、もっと選択肢が増えていたと思います。もう一つ、研究を頑張ると良いと思います。アメリカの大学では教授一人に対する学生の数が非常に多く、グループに対して教員が一人配置されるので、教員とディスカッションをする機会は日本ほど多くないです。一方で、東北大学の研究室では一つの研究室に助教、准教授、教授、技術スタッフといったように複数の教員・スタッフが在籍しているので、研究者と日常的に高度な学問のディスカッションができます。私も先生方と日々学問的なディスカッションをしていました。それを通じて研究の基礎スキルを身につけることができたのだと思います。その能力を持ってアメリカに行くことができたのは自分の強みであり武器であると思っています。

-これまでのお話を聞いて、コツコツと努力を重ねてこられた方だという印象があるのですが、努力し続けられる理由や努力するための原動力はありますか。

自分がサボった結果生じる不幸について考えた時に、それは嫌だから頑張らなきゃいけないと思って努力しているというのはありますね。また、大学生になってから、自分の行動次第で自分が生きる世界がどんどん広がっていくことを経験してきたので、もっと世界を広げて行きたい、もっといろんなところに行っていろんな人と出会いたいと考えるようになったというのも原動力としてあると思います。

-冒頭でも将来のことを考えてギターやサーフィンといった趣味の時間も確保しているとおっしゃっていました。今のお話を聞いて、将来の理想像から逆算して今何をすべきなのかを考えて生きているという感じがしました。

確かにそういう部分はあると思います。

-最後に、このインタビューを見てくれている学部1年生にメッセージをお願いします。

私は今海外の大学院で世界中から来た優秀な学生と英語で議論しながら日々生活しています。とても刺激的で、日本ではなかなかできない経験だと思います。東北大学には海外に挑戦できる環境がしっかりと整っています。もしも興味があるなら、挑戦してみてください。絶対に楽しいですし、今は見えていない世界が見えてくるようになります。ただし、留学しなきゃいけないというわけではないです。大学にいる間は、自分が面白いとか好きだと思えることに熱中できればそれで十分だと自分は思っています。学部生の4年ないし5年間は、面白いと思えることに没頭してください。その経験は将来必ず活きてくると思います。