三上翠跳 (MIKAMI Suicho)
宮城県仙台市出身の理学部化学科4年生。
現在は量子化学研究室数2グループに所属している。
インタビュー実施:2021年10月20日
研究について
今はどんな研究をしているのですか?
今は量子コンピュータを用いることで、特定の計算に関して適切なアルゴリズムを利用することでスーパーコンピュータよりも高速に計算できます。そこで高速に化学現象を正確に予測するアルゴリズムを見つけようとしています。しかし、量子コンピュータは容量が現在100ビットくらいしかなく、また、超伝導体を用いるため超低温下である必要があります。そのため、その容量を常温条件下で増やす研究を行っています。その中でエネルギーを求めるために行列の固有値を計算したり、微分方程式を解いたりしています。
どうやって研究室を選んだのですか?
-3年前期のうちから何人かの友達を誘って数学と化学の間くらいの分野である境界分野、物理化学、量子化学についての研究室などを教授に直接メールを送って許可を得た後に見学して決めました。量子アルゴリズムの研究を見てからはここしかないと思い、それ以降は見学をしていないので4,5個くらいの研究室を見学したことになりますね。
研究室を決める上で大切なことはありますか?
-自分の興味が持てない、自分の考えにそぐわないようなところは除外することです。それと、どれくらい長く研究室にいなければならないのかを知っておくことは生活をするうえで重要です。そのうえで、とりあえず、説明だけでも聞こうという心構えが大切だと思います。
今の研究に役に立っているような学習以外の活動はありますか?
-大学ではサークルに入っていないので、今の研究に役に立っているような活動があるとするなら中学・高校、地域の子ども会・ボランティアで子どものお世話などをした事です。それによって周りの人に話しかけやすい性格になれました。
面白いと思うときはありますか?
-シミュレーションが自分の考えにそぐわなくて、そのわけについて考えるときや分からなかったことが理解できるようになった瞬間が面白いと感じます。
常に様々なことを理解しようとしていますが、挫折しそうになったことはありますか?
-中学校の時から同じ問題についてを1週間考えることなどがあったため、なかなか答えが出て来ないようなことがあっても挫折せずにすみました。しかし、高校までとは違い、教科書に答えが載っているというようなことがほとんどなく、数ヶ月悩むこともあるので大変ではあります。
今の研究している内容と今まで習ってきたことで重なっているようなことはありますか?
-線形代数学はコンピュータシミュレーションする際、量子力学、力学、微分方程式(解析学)は電子の動きを考えるときに役立ちます。そして、思わぬ時に経済学などの1年に受けておいた教科の知識が思考の持ち方のヒントとして役立ったりするときもあります。
先ほどまでに出たもの以外で他にしておくべき、しておいた方がいいという事はありますか?
-ほとんどの論文が英語で書かれているので、英語に慣れておくことが大切だと思ったため、英語の勉強をしておいた方がいいです。自分の場合は英語BでTOEFL ITPを受けた時や、院試、英語で書かれた論文を読む時、英語が苦手だったため困りました。そのため、今TOEIC等の英語の勉強をしていますが、早いうちからの英語の勉強をおすすめします。授業以外でも英語に触れる機会を増やした方がいいです。東北大は集中講義やSLAの英会話教室をしているのでそれらに参加することをお勧めします。
また、活字から情報を得ることに慣れておく方が論文を読みやすくなると思うので、情報を手に入れるときは勝手に流れていってしまうテレビよりも活字である新聞を少しだけでも読むようにしておいた方が良いと思います。
どのような生活を現在送っているのですか?
-週6日研究室にいて、残りの1日は英会話レッスンなどをしています。
高校までは、数学者になりたかった?!
中学・高校の時に熱中していたものはありますか?
-数学の問題を解くという事に熱中していました。また、化学科に入った今も大学の数学の入試の問題を解く事に熱中しています。
科学はあまりやっていなかったという感じですか?
-高校2年生の頃までは数学科に行って数学者になるんだという感じでした。
東北大を選んだ理由はありますか?
-東北大は家から近い上、モンストラスムーンシャインというモジュラー函数という周期性の高い函数と群論との間の繋がりを示す数学の現象についての研究を行っており、興味を持ったからです。
では、なぜ数学科ではなく化学科に入学したのですか?
-好ましい理由にはならないですが、東北大学の数学科のAOⅡを受けたのですが、落ちてしまいました。そこで、化学も得意であったため、化学科に入りました。
学部1,2年生の時の学修の仕方
大学に入ったばかりの時はどんな気持ちでしたか?
-そもそもは数学を研究したくて東北大学に入ったので、あまり化学に対するモチベーションが高くなかったです。
授業の取り方はどのようにしましたか?
-今まで考えてこなかったような科目の「思想、経済、法律、言語学、グローバル人材基礎演習・・・」など様々な科目の全学教育の基幹科目の授業を空いているコマがあれば詰め込むという形式にしました。
今まで受けた授業の中で、特に印象に残った授業はありましたか?
-論理学です。その授業で今でも推論する上で非常に役に立っている三段論法を学べました。
多くの授業をとっていて何か良かったことはありましたか?
-様々な分野の授業を受けているうちに化学科以外の学科の人と多く関わるようになっていったため、その人たちといろいろと話していて、その時に化学について話を振られ、自分は化学科に入っているのだと意識するきっかけになりました。
何か化学に対するモチベーションが上がるような出来事はありましたか?
-「死」について考える授業が1年後期か2年前期にあり、そこで経済的な観点から「死」を考える人もいれば、法的視点から考える人もいた中、私は化学的に「死」とはどんなものなのだろうと考え始めたのが化学に対するモチベーションが上がるきっかけでした。
また、数学が好きだったので、虚数などの数学の知識が電磁気学などの科学分野に活用できるというつながりが面白いと思ったこともあります。
それと、昔は化学もテスト前に詰め込んで覚えていたのですが、分からない、忘れてしまったような所を復習したり、友達に聞いたりして原理から理解できるようになった瞬間によりモチベーションが上がりました。
モチベーションが上がったことによる変化はありましたか?
-図書館にブルーバックスという専門の分野の人が一般大衆に向けて研究している内容を解説している小さい文庫本があったので、それを読んでいました。ですが、本格的に参考書を開き始めたのは2年の後期からでした。
そのブルーバックスという本を読んだことで変わったことはありましたか?
-その研究と自分の習っているところに少しのずれはあるものの、その分野についての概要がつかめるようになりました。
先ほど2年の後期から本格的に参考書を開き始めたと仰っていましたが、なぜですか?
-分からないところを友達に聞いたりしながら学習している内に概要がつかめ、重要な点、研究する内容が分かってくるようになり、モチベーションが非常に上がったからです。
1年生のうちにしておいた方が良かったなと思うことは何かありますか?
-量子化学について学ぶ化学Aは化学の基礎となる科目であり、後からつながってくることが多いので、まじめに学んでおけば良かったなあと思いました。
やっておいて良かったことはありますか?
-最前列の席で授業を受けるようにしていたことです。そうすることで、前の方に座る人の多くは勉強熱心な人なので分からないようなことがあっても聞きやすく、聞いたら何かしらの答えを得て、その答えを学びにつなげることができました。
モチベーションが上がった後、どのような流れで実際にこの研究を行いたいなどと思うようになりましたか?
-研究テーマは3年前期の研究室選びの時に決定しました。
将来の夢
今後の進路及びすることについて決まっていることはありますか?
-大学院への進学が決まっていて、まだ決めたわけではないですが、化学の視点から量子コンピュータについて研究するような研究職に就きたいと思っています。ただ、さらに面白そうと思うような分野があればそっちに移るかもしれません。
どのように量子コンピュータについて世に広めていきたいと思っていますか?
-量子コンピュータに関する日本語の解説は現状、十分であるとはいいがたいです。そのため、研究して発見した内容を論文にするのみならず、一般の人でも楽しめるような本を日本語で出せたらいいなと思っています。そして、生命の持つ巨大分子の構造解明にも使えるような研究結果を出せたらうれしいです。
写真:量子コンピュータ
最後に
最後に1年生にアドバイスお願いします!
-まずは大学生活を楽しむことが大切です。全学教育の内は様々な分野の授業を受けてみてください。それでも自分の進みたい分野と現状が何か違うと思ったら再受験したり大学院受験時に別分野に志願したりして行っても遅くはないです。
どうしたらいいか分からないことがあったらSLAなどの支援センターにも行ってみるといいと思います。