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先輩の声

今しかできないことを、やりきろう

山下琢磨 先生

高度教養教育・学生支援機構 教育内容開発部門 助教

東北大学大学院理学研究科修了/博士(理学)

記事作成:2021年12月

猪瀬大貴(工B1)、野﨑菜月(工B1)、児玉幸斗(工B1)、谷内玲(工B1)

 

大学生必見!!

教員はどのような生活をしていて、何を経験してきたのか。

 

今回のインタビューでは、山下琢磨先生についてお話を伺う。山下先生は東北大学出身であり、大学1年生の皆さんと年は10歳しか違わない。今回のインタビューでは、山下先生の学生時代や教員として働く現在の生活についてお聞きした。先生の持つ信念やこれからのアドバイスを参考にしてもらいたい!!!

 

目次

山下先生の生い立ち

現在何をしているのか

将来の展望

学生へのアドバイス

編集後記

 

山下先生の学生時代 ~隙間産業を狙う~

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私は高校時代、化学と物理を選択していました。数学と物理、化学が好きだったのですが、大学の数学や物理は難しいと聞いたため、大学では化学を専攻することに決めました。化学は数式をゴリゴリに使う科目ではないし、知識が重要視される科目のように高校生の時は思っていたので、自分でもできると思い、選択しました。

 

大学に入ってからは、児童館などでボランティア活動を行うサークルに所属していました。先輩から、「人数が足りないから来てほしい」と言われたので入りました。このサークルでは、主に人形劇をやりました。人形劇というのは、ただ昔話を人形でやればいいというものでもないんです。場面の切り替えが人形劇だとわかりにくいですからね。人形それ自体には表情がありませんし、絵本のようにページを変えたりすることはできません。そのため、脚本から制作して、場面の切り替えがわかりやすいように話の流れを工夫しました。

 

それから、塾講師のアルバイトも1年生の終わりから4年生の初めまで続けてました。そこで中学生たちと話す中で、教えることの楽しさっていうものを感じるようになりました。大学でも教職の授業は取っていたので、それをきっかけに高校の教師になろうと思いましたね。そして、学部4年生のときに教員採用試験を受けました。県にもよると思うんですけど、学部4年生のときに受けて、受かった後にプラスで2年間修士課程に進んでから来てください、という制度があるんです。私もその制度で受験しました。ありがたいことに合格をいただいたんですけど、修士1年の終わりぐらいに、もう少し研究を続けたいなと思うようになり、「大変ごめんなさい」といったことを伝えて博士課程に進みました。

 

その博士課程に進んだきっかけっていうのは、隙間産業的なモチベーションが大きかったです。私の分野って実験系の人もいれば理論系の人もいるんですが、ちょうど私の世代からは理論系の若手の先生が少なかったんです。このままだと実験ばかりで理論が復活できない、みたいな雰囲気がありました。とすると僕がやらなくて誰がやるんだ、と(笑)。研究自体もニッチな分野なので、人が少ないところに行く、という意味では、人形劇のボランティアのサークルに入った理由と繋がっている気もしますね。あとは大学でも教育に携わることもできるので、そういう意味もあって博士に進みました。

現在何をしているのか ~忙しい日々にもワークライフバランスを~

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最近は、反粒子という物質に関わる研究をしています。反粒子が物質の中に入ったり混ざったりしたときにどういった化学反応が起こるか、またエキゾチック原子といって反物質が混ざった原子を作るにはどうしたらいいか、それらはどういった状態なのか、といったことについてですね。この分野は、ミクロな部分では明らかになっていない部分は多いのですが、応用の部分では多くが実用されています。主に医療分野や材料分野といったところで応用されています。例えば医療の分野では、癌を発見するのに役立っていたり、他にも薬の効果や役割を調べるのにも応用されたりしています。

 

現在大学では、自分の研究の他には、研究室の学生の研究を見たり、自然科学総合実験の授業で学生に教えたりしています。一日のうち、午前は研究室で事務や自分の研究に関することなどをやって、午後は研究室の学生と研究の進捗状況を話したり新しい論文の情報を共有したりします。それが終わったら自分の研究をしたり論文を書いたりしています。自然科学総合実験の授業がある時は午前中から準備をしています。大学の教員は、いつ何をする、というようなことが決まっていないので、仕事とプライベートの線引きが少し難しいように感じます。私の場合は、休みの日は何もしないなど、オンとオフの切り替えはしっかりするようにしています。学生のみなさんもコロナの影響でオンデマンドの授業が増えたりして、生活が乱れやすいと思うので、大変そうだなと思いますね。

 

将来の展望 ~高みを目指して~

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研究に関するところで、 この分野に進んだ一つのきっかけが隙間産業的であったので、この分野が延々隙間産業であり続けてほしいとは思っていません。これが広がってほしいし、そしてこの分野が活発化していったらいいなみたいなところはあります。そういうことができたらなということが一つ 。

あとは自然科学総合実験のところで、もうちょっと生徒が面白いと思える実験にできたらいいなとか 、学ぶところが増えるような実験になったらいいなというのはちょっと考えたりしています。もともと教育をやりたかったので、そっちの方面でもう少しできることができたらなと思います。

学生へのアドバイス ~学部1,2年生へ向けて~

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大学生は良くも悪くも時間があるので、色々なことを経験するのが良いです。具体的には、課外活動を納得いくまでやるのが良いと思います。また、アルバイトをして自由に使えるお金を増やすのも良いですね。少し真面目な話をすると、すべての授業を真面目に受けることも大事です。自分は興味がないと思っていた分野でも、後になって興味が出てきたり、必要に迫られたりします。実際、僕が行った研究室も、当初は興味のなかった分野のものでした。その研究室の先生には、僕が研究室配属される前に授業でお世話になっていましたが、僕はその授業を興味がないからといって、ほとんど聞いていませんでした。研究室に配属され、あとから「これ授業でやったよな」となって初めて、僕はあの授業をもう少し真面目に受けとけば良かったな、と後悔しました。こういった事が起きる可能性があるので、皆さんも興味がないと思った分野の授業でも真面目に受けるようにしてください。

 

大学の授業は難しいですよね。それをその場で100%理解できなくても良いと思います。僕の専門分野において計算をする場合、厳密な数学的証明は専門家にお任せして、その結果を利用して計算することも時々あります。原理を深く知ることも大事かもしれませんが、広く浅く知識を集めることもまた、教養教育科目の一つの目標だったりします。

 

僕は研究に行き詰まったときなんかは、寝るようにしています。寝て起きたら何か思いつく事があります。また、僕は神社巡りとかも好きなので、歩いて体を動かすことでリフレッシュしたりしています。

 

僕の人生の教訓に、「外面だけでも良くする」というのがあります。大学の授業で、両親の仲が悪いと子供にどんな影響がでるのか、という話を教授から聞いたことがありました。子供から見ると険悪な仲ではないように振る舞うほうが、子供にとって悪い影響が少ない、という研究結果があるのです。個人的には目から鱗でした。

 

また、狙った結果が出ず、研究がうまくいかないときでも、なんとかしてその結果をポジティブに捉えています。もちろん、心の底から明るいのが一番良いです。

 

編集後記

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私たちが山下先生にインタビューを行う中で感じたことは、隙間産業を狙う、という考えが先生の人生の中で一貫していたことだ。先生自身は強く意識していたわけではないように見受けられたものの、私たちはインタビューを通してこうした共通点を見出すことができたことは大きな収穫であったと感じている。誰もやったことのない分野に進み、その分野を開拓していくことは簡単なことではないはずだ。しかし、山下先生とのインタビューを通して、そうした分野にも目を向けてみようと思えるきっかけを、インタビュアーの私たち4人全員が得ることができた。私たち大学生にはまだ進路を決めるには十分なほど時間がある。これからの大学生活を通じて、自ら新しい分野を見つけていきたい。