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先輩の声

留学、ジェンダー、そして院進 〜自分の『興味』をつかまえて〜

Nemoto Hiroki
根本浩希 さん
東北大学文学部 社会学専修3年

 カリフォルニア大学ロサンゼルス校にて1年間の留学経験をもつ根本さん。これまでSLA*やGCS**のスタッフとして活躍し、国際交流サークルIPLANET***でリーダー・チューターを務めるなど、精力的な活動を行っている。また、ジェンダーへの関心を追求するなか、留学中にジェンダー関連施設でのインターンシップに参加し、日本でもサークルや市民団体に所属して活動するなど、主体的な学びの姿勢を貫いている。

今回のインタビューでは、自分の『興味』を無心に追いかける根本さんの足取りを探った。
彼の『興味』はどこから来て、どこへ行くのかー

* Student Learning Adciserの略。学習支援センターにおいて、主に学部1・2年生の学びを支援する先輩学生のこと。
 ** グローバルキャンパスサポーター(Global Campus Supporter)の略。自らの留学経験を活かし、これから留学をめざす学生を支援する学生サポーターのこと。
*** 留学生支援・国際交流を目的とする、東北大学の学生団体。全体の企画・運営に携わる「リーダー」、留学生に一対一の支援を行うチューターなどの役職がある。

2023年12月
編集:山本裕真(文学部1年), 藤岡真菜(文学部1年), 山口璃空(農学部1年), 両方菜津子(農学部2年)

Topics

  • 「生き急いでる?」
  • ラ・ラ・ランドからカリフォルニアへ
  • カリフォルニアでの学びと気づき
  • 留学をめざす人へ
  • ジェンダー、そして社会学
  • 院進は真っ暗闇!?
  • 読書会の効能
  • 興味を口に出しておく
  • 興味を見つけるには?
  • 編集後記

「生き急いでる?」 

僕はこれまで、国際系とジェンダーという2つの軸という考え方をもとに、色々なことに取り組んできました。国際系だとIPLANETの運営に関わったり、留学に行ったりしました。国際交流に関わるアルバイトを学内で4つ掛け持ちしています。留学経験者としてSLAで英語を教えたり、GCSで留学を目指す学生をサポートしたり。それから、IPLANETにはチューター・チューティー制度というのがあって、交換留学に来ている留学生の生活・学習支援を行っています。ジェンダー分野では、ジェンダー問題を扱う学内のサークルに入ったり、学外の市民団体やNPOでちょっとしたお手伝いをさせてもらったりしています。留学中にも、ジェンダーを扱う学内施設でインターンをしましたね。

自分は「あれもこれもやりたい」という気持ちが強くて、ガンガン突き進んでしまうところがあります。それで周りの人からは「生き急いでるね」と言われることもあります(笑)。でも、自分ではやりたいことをやっているだけなので、別に生き急いでいる実感はないんです。ただただ興味関心のあることを追究しているだけで、それを挑戦だとか苦労だとか思うことはあまりないですね。

ラ・ラ・ランドからカリフォルニアへ

僕はミュージカル映画が好きなんですよ。お気に入りは「ラ・ラ・ランド*」と「グレイテスト・ショーマン**」。中学生の頃から海外の映画やドラマにハマり始めて、そこからだんだんと海外に興味を持っていきました。

アメリカの大学に留学しようと決めたのは、スクリーンで見るキラキラのキャンパスライフに憧れていたから。というのもありますが(笑)、向こうではサークルやインターン、ボランティアなどの課外活動が非常に盛んで、学生も活発で意識が高い。そういう環境を経験してみたかったんです。実際、向こうの大学では学内の寮に暮らして生活するので、一日中どっぷりキャンパスライフに浸かることになります。授業外でも友達と一緒に勉強したり、ご飯を食べたり、インターン等の活動も含めてかなり充実していたと思います。

授業の幅も日本に比べてとても広くて、自分の興味とピンポイントで重なる授業を受けられるのはよかったですね。僕が受けたジェンダー系の授業で、ゲストスピーカーとして外部のNPOや市民団体からアクティビストを招いてくるというのがあって、印象的でした。それから、アメリカのアジア系移民にフォーカスして、その歴史や現状を学ぶ授業なんかもありました。多種多様なトピックを深く学べるというのは、向こうの大学の大きな特徴だと思います。

* 2016年公開のアメリカ映画。ロサンゼルスを舞台としたミュージカルで、アカデミー賞で6部門受賞、ゴールデングローブ賞では7部門を獲得するなど高い評価を得た。
** 2017年公開のアメリカ映画。ショービジネスをテーマとするミュージカルで、日本でも大ヒットを記録した。

カリフォルニアでの苦労と気づき

  留学中に特に苦労したのは、やはり語学力ですね。IPLANETでそれなりに留学生と関わっていたこともあって、自分は結構英語を話せる方だと思っていたんです。でも、いざネイティブに囲まれて暮らし始めると、知らない単語やコテコテのアクセントがいっぱいで大変でした。日本に来ている留学生にはヨーロッパやアジアから来ている人も多くて、彼らは僕らと同じで英語を第二外国語として話しているので、話が通じやすいんですよね。しかし、ネイティブとなると全然勝手が違うんです。

その上、ディスカッションが多い向こうの授業では、積極的に発言していかないと単位がもらえない。自分の意見をしっかり主張しないと、いないものとみなされてどんどん議論から置いていかれてしまう。日本の協調的な文化で育ってきた自分には、慣れるのに時間がかかりましたね。本当に、1年かけてどうにかできるようになったという感じです。

留学中には色々な出会いがあります。中でも印象に残っているのが、移民2世の人々と話したことです。彼らは、親が移民としてアメリカに渡ってきたという世代です。僕がいたカリフォルニアは特に移民が多い地域で、彼らの親世代には命からがらアメリカにたどり着いたという人が少なくないんです。例えば、ベトナム系移民で、ベトナム戦争の時期、親がボートに乗り込んで必死でアメリカまで逃げて来たという人がいたり、メキシコからの移民で、命懸けで国境を越えてきたという人もいました。僕が歴史の教科書でしか知らなかったことが、彼らの中ではまだ生々しい記憶として生きているんです。

そういう話を聞いて、自分が育ってきた世界の生ぬるさみたいなものを感じました。自分がいかに恵まれた環境に生きていたのか痛感して、一日一日を大事にしなくちゃいけないと思いました。同時に、それまで持っていたアメリカ像の一面性にも気付かされました。アメリカという国は、ハリウッド映画で見るような白人中心の世界だけで成り立っているんじゃない。全く違う側面もあるんだということを、彼らとの出会いを通じて学びましたね。

留学をめざす人へ

 「自分は無理」と思い込まないで

留学は本当にした方がいいと思います。現在、円安や物価高など、金銭面で逆風が吹いているのは確かです。でも、本気で留学しようと思えば、意外と問題は解決できたりするんですよ。東北大学は色々な国とパートナーシップ協定を結んでいるし、奨学金の制度も充実しています。問題は、そういう制度がいまいち生かされていないこと。良い支援制度が沢山あるのに、それを知らないせいで、本当は行けるはずなのに行けないと思い込んでしまう人が多い。GCSとして留学をめざす学生と話していると本当にそう感じます。そうならないためには、留学から帰ってきた人に話を聞くなど、自分から積極的に情報を集めにいくとよいかもしれません。それまで気づかなかった色々なチャンスが見えてくると思います。

内面的な準備

また、奨学金に申し込んだり、パスポートを用意したりといった実際的な準備とは別に、

自分の内面を備えておくことも大切です。具体的には、IPLANETなどの交流団体に参加したり、国際共修の授業を取ったりして、留学生と関わる機会を増やすといいでしょう。彼らの考え方やコミュニケーションの取り方は、日本人学生のそれとはかなり違っています。そうした差異にあらかじめ慣れておくことで、留学の予行演習をしておくとよいかもしれません。

僕は1年生の時からIPLANETに所属して、2セメスターからはリーダーとして活動していました。イベントを企画して、留学生に日本文化を教えたり、逆に彼らの国の文化を教えてもらったりしました。IPLANETに入って良かったのは、自分と同じように国際交流に興味を持っている人と知り合えたことです。同じタイミングで留学に行った人も多かったし、留学準備のための情報を共有したり、留学中にも連絡を取り合ったりしました。本当に心強い存在でしたね。

ジェンダー、そして社会学

  学部1年の終わりに、自分が所属する研究室を選ばなければいけなくて*。自分はもともとジェンダーやLGBTなどの分野に興味があったので、そこから絞り込んでいきました。候補に挙がったのは、社会学と文化人類学、それから行動科学もそうですね。IPLAでたまたま知り合った先輩に話を聞いたりしながら、どうしようかと考えていました。

社会学に決めた理由としては、様々な理論を扱う社会学の性格に惹かれたことが一つ。それから、自分の興味ドンピシャの研究をしているドクターの先輩が社会学の研究室にいたんですね。そういう人から話を聞いたりして、最後は直感の力も借りつつ、「ここいいかも」と(笑)。

留学に行く前も、ジェンダー系のサークルで活動したり、関連分野の論文を自分で読んで勉強したりしていました。先輩と話したりする中で、それまで自分がジェンダーに対して持っていた見方・意見に、結構偏りがあったことがわかりました。マイノリティの中にも多様性がある、というか。もっと色々な人の話を聞いて学びを深め、自分の視野を広めていかないと、結局は独りよがりになってしまうんですね。

*文学部の学生は26の専修から1つを選ぶ必要があり、2年次以降はその研究室に所属することになる。

院進は真っ暗闇!?

今は院進(大学院進学)を考えています。といっても、もともとは就活をしていました。文系では学部を卒業して就職する人が大半で、最近だと3年の夏ぐらいから就活を始める人が多いんです。それで僕も遅れてはまずいということで、3年の夏からいわゆる夏インターンなどをしていました。だけど、「やっぱり、何か違うな」という気持ちがずっとあって、一度立ち止まって「自分が本当にやりたいことってなんだろう」と考えてみたんです。そしたら、「やっぱり自分はジェンダーとか社会学をやりたい」という気持ちがはっきりして、「それと全然関係がないことを無理にやってもしょうがないよね」と思ったんです。それからは、自分が進みたい道(院進)が現実的に可能なのか、色々な制度や仕組みなどを調べました。

僕はもともと、文系で院に進むなんてあり得ないと思っていて。その先には何もない、食いっぱぐれて野垂れ死ぬというイメージしかなくて(笑)。だから院進なんて無理!と本気で思っていたんですが、院生の先輩とかと話しているうちに「なんだ、全然できるじゃん」みたいな気持ちになったんですよね。最近では東北大学も学生への支援に力を入れているので、「院進=お先真っ暗」というわけではない。意外と研究が続けられそうだということがわかったので、もっと自分の興味を突き詰めてみるために、院進しようと決めました。

読書会の効能

  社会学研究室ではさまざまな読書会が開かれていました。社会理論の古典や難解な専門書を読むこともあったし、より自分の興味に近い、ジェンダー関連の本を先輩や有志の人と集まって読んだりもしていました。

読書会のメリットとして、モチベーションが続きやすいということがあります。皆で一つの本に取り組むことになるので、一人では読む気が起きないような分厚い専門書でも読み進めていける。また、読書会でよくあるのが、担当者がそれぞれ担当箇所をまとめたレジュメを作ってきて発表するという形式です。難しい内容を人前で説明しなければいけないので、プレゼンスキルや言語化能力も磨かれますね。

もう一つ、自分の意見が相対化できるという点もすごく大事かなと。ジェンダー読書会に参加する中でわかったのが、その分野に詳しい人は、知識がある反面、偏った意見を持っていることが少なくないということです。その読書会には、「ジェンダーについて詳しいわけではないけど、この分野についてもっと知りたい」という人も何人か参加していたのですが、そうした人々がいたおかげで、一つのテーマに対して色々な視点がありうることに気付くことができました。

 興味を口に出しておく

日頃から自分の興味を人に話しておくといいと思います。とにかく口に出してアピールしておくと、あとあと機会が巡ってくるのかなと。

読書会に参加したい場合は本来、研究室などにポスターが貼ってあることが多いので、そこから知るというのが一つ。ただ、僕の場合は他の人から声をかけてもらうことが多かったですね。僕は「自分はジェンダーに興味がある、勉強したい」といろんな人に話していたんです。すると誰かが「そういえば君、ジェンダーに興味あるって言ってたよね」「こういう読書会あるよ」「こういう先輩がいるから紹介するよ」と声をかけてくれて参加するに至りました。

興味を見つけるには?

「そもそも、自分が何に興味があるのかすらわからない」と言う人もいるかもしれません。でも、実はちゃんと興味の「核」は持っているんだけど、自分ではそれに気づいていないだけ、という状況も多い。「学問的興味」とか「人生の目標」とか、生真面目に考えてこだわるんじゃなくて、もっと自分自身と向き合ってみたらいいんじゃないかな。素朴に自分を見つめ直してみることで、それまで覆い隠されていた自分の興味が見つかったりしますから。

それから、自分と向き合うというのとは別のベクトルで、色々な人と話してみる、話を聞いてみることも必要です。大学に入ってから、やっておいて本当によかったことがあって。「この先輩おもしろそう」「この人、かっこいいな」と思ったら、ご飯に誘ったり、お茶しませんかって声をかけたりして、とにかくいろんな先輩と話したんです。ちょっと勇気はいるけれど、そうやって自分のロールモデルを増やしていくと、「じゃあ自分は何をしたいんだろう」と考えた時、やりたいことが見えてくると思います。

僕も、ジェンダーへの興味がここまでしっかりしたものになりうるとは思っていませんでした。ジェンダーってあらゆる人に関連する話題だし、興味はあっても「自分はそこまで関心があるわけじゃない」「自分の『興味』なんて人並みで、他にもっと真剣にジェンダーに対して考えている人はいくらでもいる」とか考えてしまって。「だからこの程度の関心を『興味』といってはいけない」と。でも、そんなことは全然ないんですよ。特に大学時代って、自分の興味を自由に追求できる貴重な時間ですから。なんでもいいから気になるものは突き詰めてみるべきだと思います。

編集後記

  大学生になってから、自分が学びたいものは何なのか、自分が本当にしたいことは何なのか見失い、それが悩みになっていた。今回、根本さんのお話を聞き、その悩みが軽くなった気がした。まだ、学びたいものやしたいことは分からない。ただ、根本さんがおっしゃっていた通り、素朴に自分を見つめ直したりいろいろな人と話をしたりしていこうと思う。(藤岡)

はじめて根本さんの経歴を読んだとき、「この人は自分とは違うタイプの人間だ」と、遠く及ばない存在のように感じたものだ。しかし、実際に会ってお話を聞いているうちに、様々な人との出会いが彼をここまで導いてきたのだ、ということが見えてきた。遠い「憧れ」と膝を交えて話すことで、はるか向こうの世界の出来事に思えていたものが、実は自分にも起こりうるのだと気づく。そのとき、「憧れ」は「可能性」に変わる。根本さんがくれたのは、まさしくそんな体験だった。(山本)

根本さんの、興味の核はすでに持っているという話が印象的だった。その核を見つけるために自分と向き合うのみでなく、いろいろな人の話を聞いてみることが重要であると、今回の根本さんの話を聞いて直に感じた。様々なことに挑戦していく根本さんの姿は自分のロールモデルの1人となった。(山口)

実際にお話を伺うまでは、なぜ根本さんがこれほど様々な物事に挑戦できるのかと疑問に思っていたが、今回のインタビューの中で話してくださった、「純粋に興味や関心を追究する」・「素朴に自分の興味と向き合ってみる」という考え方が、「何かに挑戦しなければ」と肩肘張らず、物事に取り組むうえでのヒントとなった。さらに人との関わりを積極的に持つことで、新たな刺激を受ける機会を持ち、その中で考え方や人生も含め自分を磨いていくことができると改めて感じた。(両方)